【手順】名物の作り方
今から8年前。
僕は初めて飲食店の立ち上げというものに責任のあるポジションで携わりました。
そのお店は、当時運営していたオーナーさんやスタッフさんの頑張りのおかげで、程なくしていわゆる大繁盛店となり、ある業界の中では僅かながら知名度のあるお店へと成長してくれました。
ご縁があり、一度離れたそのお店の現場に今はコンサルという形で携わらさせていただいています。
そのお店を立ち上げた経験が後押ししてくれたおかげで、7業態7店舗の繁盛店を責任者として立ち上げることができました。
そんな経験を踏まえながら、
新規オープン店の名物を作っていく手順を解説していこうと思います。
立地
飲食店は物件ありきです。
物件=箱がないともちろん成立しません。
その街はどんな街なのか
その街のどんなところにあるのか。
曜日ごと、時間帯ごとに人通りやどんな人が歩いているのかをリサーチしてください。
本当に売りたいもの
あなたが本当に売りたいものはなんでしょうか?
ここが超重要!
唐揚げや赤身肉みたいな具体的なものではなく、
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全国の第一次産業の方の想い
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日本の伝統文化の継承
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明日の活力
など、抽象度を上げた概念的なものです。
簡単にいうとお店をやる人の心みたいなニュアンスに近いかもしれません。
コンセプト
次にコンセプトを考えます。
コンセプトといってもちょっと難しい印象を受けるかもしれませんが、いくつかに分解して考えると少し簡単になります。
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基本コンセプト
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ターゲット
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利用動機
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接客
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メニュー
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販促
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価格
などです。
基本コンセプト
上記で述べた本当に売りたいものが基本コンセプトだと思ってください。
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全国の漁師さん直送の新鮮な魚介と全国の酒蔵さん直送の地酒を合わせる海鮮炉端焼き
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岐阜の郷土料理を古き良き古民家で味わう個室居酒屋
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食材、調味料は完全無添加 体の中から明日の活力を提供するオーガニック隠れ家フレンチレストラン
みたいな。
ターゲット
どんな人に来てもらいたいのか?
ここは次回以降詳しく解説していきます。
利用動機
- デート
- 接待
- 一人でちょい飲み
- 仲間内でワイワイ
など。
複数あってもいいですが、メイン1つとサブ2つぐらいで。
接客
接客スタイルを決めます。
ここは次回以降詳しく解説していきます。
メニュー
この段階ではメニューの作り込みはしないこと。
なんとなく全体像や似た業態にありそうなメニューをピックアップ。
販促
どうやって集客するかを考えます。
価格
これは超重要。
客単価などを決めていく作業です。
ここを間違えると元も子もありません。
以上の7項目を丁寧に決めいくことが大切。
ここまで来たらもう少しです。
次は名物商品のアイデア出しになります。
アイデアを作る
前振りが長くなりましたが、いよいよ名物商品のアイデアを具体的に作っていきます。
アイデア自体の作り方は以前の記事で書いているので、読んでもらえると更に深められると思います。
名物ということはそのお店の看板です。
看板を作ることは容易ではないことではあるのですが、ここをクリアするとお店は強くなり、盤石への軌道に乗っていきます。
名物商品のアイデアにアプローチする
今回は3つの観点での具体的な名物の作りを紹介します。
【全く新しいもの】
これができればもう本当に最高なんですが、
料理のアイデアの閃き方 - 遠藤和也の“ひふみ”blogでも示している通り、通常アイデアというものは既存のものと既存のものとの掛け合わせから生まれます。
なので、この全く新しいものを生み出そうとすることは避けることをお勧めします。
【他のお店がやっていないもの】
これは超チャンス物件です。
他のお店がやってないけど、本当に美味しいもの。
ポイントは、本当に美味しんだけど、なんで他のお店はやっていないんだろう?と少しだけ深いところで探ってみることです。
やっていない理由は2つぐらいな気がします。
- オペレーションが大変
- 原価などコストが合わない
この2つをクリアすればOKです。
【定番商品】
これは、僕が一番多用するやり方です。
定番商品を名物にするということです。
もう少しわかりやすく表現すると、
『誰もが知っている名前のついている料理を120点で出す』です。
この発想で作ったのが、
- ポテサラ
- 魚の塩焼き
- 白米
- アクアパッツァ
- パンナコッタ
などかなと思います。
具体的には、
【ポテサラ】
→ジャガイモは冷たいより温かいの方が美味しいから出来立てあったかい状態で。
【魚の塩焼き】
→切り身ではなく、一本丸ごと。串打ちも一般的な踊り串ではなくS字で躍動感を。
【白米】
→これは日本一のお米を紹介していただいた方に感謝しかありません。日本一のお米を南部鉄器で炊きたてで。
【アクアパッツァ】
→イタリア、ソレントの近くにある『ロ・スコーリオ』といお店に直接行き、作り方を教えてもらったアクアパッツァを日本人の舌に合うように少しアレンジ。
【パンナコッタ】
→あの三つ星レストランカンテサンス岸田シェフのスペシャリテ『ヤギ乳のババロア』を参考に一口の塩味のパンナコッタに。
ポイントは、
既存のものの形式に囚われず、全く違う業態や価格帯の料理を参考に素材の良さを活かす
という発想です。
どうしても客単価5000円の居酒屋をやろうとすると同じような業態のお店に行って勉強しようとしがちです。
これだとアイデアの幅がかなり狭くなっちゃいます。
違う業態、違う価格帯のお店に触れることで、一旦振り切って、どうしたら自分のお店で活かせるのかを考えた方が、結果的にコスパいいです。
試作試食
上記の手順で名物のアイデアができたらまず形にしてみます。
完成度は低くていいです。まずなんらかの形にすることが超大切です。
そして作ったら当たり前ですが試食しましょう。
ここで大切なのは美味しいか美味しくないかを判断することでもありますが、それ以上にその料理のアイデアの可能性です。
陥りがちなケースとして、そこそこ美味しいんだけど名物としての可能性が小さいものを、それに固執して違うアイデアを試さないことです。
奇をてらいすぎてもよくないです。
わかりにくいものは名物として育てにくいからです。
試作、試食を繰り返し、味を決めていくのと、もっと大切なのは出し方を工夫することです。
何も特別なことでなくても大丈夫。
- ポーション、単価を少しでけ変える
- 卓上でソースかけたりして仕上げる
- シズル感を意識する
この3点だけでも今ある商品が名物になる可能性が生まれてきます。
美味しいと思える商品を名物に昇華させることができます。
育てる
ここまできたらあとは育てていくことです。
『育てる』には2つの考えがあります。
- 現状維持
- マイナーチェンジ&マイナーチェンジ
【現状維持】は、圧倒的に自信のある商品にのみ通用するやり方です。
上記の例だとポテサラだけが該当します。
絶対的に美味しいと確信があって、9割以上のお客様が注文してくれて、スタッフも大好き
こういう場合のみ現状維持で名物は育ちます。
【マイナーチェンジ&マイナーチェンジ』はそのままです。
現状維持は衰退の始まりという言葉がありますが、それを日々補い続けるやり方です。
先ほども述べた
- ポーション、単価を少しでけ変える
- 卓上でソースかけたりして仕上げる
- シズル感を意識する
という3点を毎日毎日、毎オーダー毎オーダー考え続けるというものです。
機械的にこなすだけではダメです。
どうしたら美味しくなるかを考えることももちろん、
何よりもどうしたらお客様はより喜んでくれるのか
を考え続けてください。
料理っていうものは恋人と似てます。
最初のうちはあの手この手でより良いものにしようと思うけれど、いつの日か決まったことをするだけになってしまいます。
3ヶ月経っても「ありがとう」や「ごめんね」、優しいハグが大切なように、
何皿作っても、「これでお客様は笑顔になるのか」「改善点はないか」という気持ちで向き合い、一皿一皿に感謝を持って提供できるかが『そのお店の料理』という漠然とした、でも超大切な概念を作ります。
どんな時も感謝を持って料理したいものです。
この記事で少しでも役に立てればこれ以上嬉しいことはありません。
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ではまた!!