遠藤和也の“ひふみ”blog

食に関する「ひふみ」を解決していくblogです。そもそもひふみとは「非・不・未」のことで、非効率や非合理的、不安や不便、未完や未熟などのことです。 プロの料理人も一般の方も、料理や食に興味のある人なら為になる内容となっています。

1店舗で6万食!温かいポテトサラダができるまで

   

 

今回は温かいポテトサラダはなぜできたか?

をお伝えしていきます。

 

まず、『温かいポテトサラダ』ってなに?

とツッコミを入れたくなる出だしですが、

温かいポテトサラダは

西新宿にあるろばた翔というお店の名物商品です。

約8年前にオープンして以来ずっと、オーダー率90%という驚異の数字を残し続け、

今尚、その出数を伸ばし続けているというモンスター商品。

 

オーダーを頂いてからじゃがいもを蒸し、いぶりがっこ鮭とば、鮪の酒盗を隠し味にした出来立ての温かいポテトサラダはおかわりが続出するほどです。

 

今から9年ほど前、その原型は生まれました。

 

2011年の8月頃だったと思います。北参道の24席の小さな居酒屋で店長として厨房に立っていました。

小さいお店らしく常連様に支えられていました。

その日もカウンターにはたくさんの常連様の顔がありました。

一人の常連様から

「店長、ポテサラちょうだい」

とオーダーを頂いたのですが、困りました。

当時のメニューにポテサラは用意しておらず、また、かなりバタバタと忙しい時間帯でもありました。

ただ、当時から「食材さえあればなんでも作ります」というスタンスだったので、

「生のじゃがいもはあるので、めーっちゃ時間かかっちゃいますけど作りますね!」

と勢いで答えたことは今でもはっきりと覚えています。

すぐにじゃがいもを洗い、蒸し器につっこみました。

他のオーダーもある程度落ち着き、じゃがいもも蒸しあがりました。

具材は確か冷蔵庫に残っていたキャベツだけだったと思います。

マヨネーズだけで和えるのはなんか味気ないので、アンチョビみたいなコクが出そうなものないかなと冷蔵庫を探しますが見当たりません。

珍味ボックスの中を見ると鮪の酒盗が入っていました。

なんとなく美味しそうだったのでマヨネーズ、じゃがいもと混ぜて超シンプルなポテサラがオーダーの約1時間後に出来上がりました。

ここで大きな問題が発生しました。

蒸したてなので温かいのです。

でもこんなに頑張ったんだし、謝って冷めるまで更に時間を頂くか、温かいまま提供しようか迷いながら、

「〇〇さんすみません。ポテサラ出来たんですけど、まだ温かくて、、

温かい状態でもいいですか?」

「あ、全然いいよ!ちょうだい」

と言ってもらえて完全なるプロトタイプながら、温かいポテトサラダが誕生しました。

ビビりながら出したものの、

「店長!これめっちゃうまいよ!定番にした方がいいんじゃない?」

とまで言って頂き、予想をはるかに上回るありがたい感想を頂きました。

 

早速、その次の日からメニューインしてみると、

たくさんの「美味しい」のお声を頂き、

毎日というかオーダー毎に少しづつレシピの調節を行い、

より良い“温かいポテトサラダ”を目指してきました。

今の形になるまでおそらく300回以上はレシピを変えたと思います。

より良いものを、より美味しいものを、より喜んでいただけるものを

と想い続け改良に改良を重ねてきました。

 

すっかり人気商品になってくれたポテサラ。

毎回ポテサラを頼んでくれる常連様がいました。

その方はいつも日本酒を飲まれていて、

お食事の終盤には必ず鮭とば炙りを食べながらお酒を飲みます。

ある日その常連様からご予約を頂きました。

その瞬間閃いて、

「あ、ポテサラに鮭とば入れてみよう。じゃがいもとキャベツと一緒に蒸したら絶対に美味しい」

そう思いました。

そこで初めて、今のレシピの大枠が決まったのです。

その日以来、じゃがいも、キャベツ、鮭とばの組み合わせでやってきました。

 

次の年、冒頭で紹介した“ろばた翔”のオープンを迎え、迷いなくグランドメニューに据え、

8年間で6万食を超えるという驚異的な数字を叩き出してくれました。

ここまでにしてくれたろばた翔のメンバーには心から感謝しています。

 

8年間、レシピを守り抜いてくれたので、

逆にまた少し改良するっていうのも面白いかなと密かに考えています。

 

 

今回はちょっと個人的な内容になりましたが、

温かいポテトサラダは僕の料理人人生のターニングポイントであり、料理に向き合うということの原点です。

 

最後まで読んで頂きありがとうございます。