遠藤和也の“ひふみ”blog

食に関する「ひふみ」を解決していくblogです。そもそもひふみとは「非・不・未」のことで、非効率や非合理的、不安や不便、未完や未熟などのことです。 プロの料理人も一般の方も、料理や食に興味のある人なら為になる内容となっています。

料理のアイデアの閃き方

今日はタイトルにもある通り、ちょっとプロ目線での
料理のアイデアを閃く方法についてです。


なかなか料理のアイデアが浮かばない。

毎日メニュー開発をしたい。
シンプルに料理を楽しみたい。
そんな方にはぴったりな内容になっています。



さて、

メニュー開発はセンス才能が大事だと思っている人多いのではないでしょうか?

実は、やり方は意外とシンプルで、手順を踏めばある程度誰にでもできます。
ただ、容易なことではありません。
とゆこと?
とツッコミを入れたくなりますが、
 
簡単に言うと、
意外と根気強さが必要です。
やり方は知っていてもそのやり方を丁寧にやる人はかなり少ないということです。
少ないどころか、99%の人はやらないかもしれません。
ですから、逆にこのやり方をやれば、
1/100の人材
になれる可能性が十分あるということになります。

料理のアイデアといっても奇をてらった創作系だけではなくても、伝統料理の出し方や価値の付け方という観点でも学べる内容になります。
 

まず、何ごとにも鉄則があって、
原理→方法の順番で学ぶという順番で学ぶということです。


イデアの原理
そもそもアイデアとは、なんでしょうか?

イデア既存の要素の新しい組み合わせ
 

テクノロジーや文化がかなりのレベルで発達した現代において
全く新しいサービスやプロダクトを生み出すことは極々ほんの一握りの超天才にしかできないことで、
スティーブ・ジョブズマーク・ザッカーバーグですらそれまでにあったものの新しい組み合わせによって、世界的な大ヒットを作り出しています。

99.9%の我々非天才こそ過去の天才や偉人が作り上げてくれた素晴らしい遺産を使うべきなのは明らかです。

既存の要素を新しく組み合わせるには?
闇雲に組み合わせてももちろんうまくいきません。
物事の関連性を見つけ出す(=結びつける)必要があります。

結びつける力は習慣によって強化できます。
なぞかけ芸人のねずっちさんは、結びつけるプロです。
「 整いました。歯科医と掛けまして、無の境地と解く。その心は、どちらも歯垢(思考)を除去します。」
素晴らしいですよね。
おそらくねずっちさんは常日頃から物事の関連性を探しているのだと思います。

前振りが長くなりましたが、料理に置き換えると食材や調味料、既存の料理の組み合わせを考え続け、試行錯誤することが大切です。
考え続け、行動し続けた人にはやはり勝てません。
圧倒的なインプット圧倒的なアウトプット
が必ず結果を作ります。

やや固い内容にはなってしまいましたが、概要は掴んでいただけたのではないでしょうか。
 

閃くというと突発的なことのように感じますが、決してそんなことではなく正しい手順を踏むことでアイデアは生まれます。
あえて「閃く」という表現にしていますが、むしろ閃くというよりは「作る」というニュアンスで捉えていただけるとわかりやすいかもしれません。

また、今回の内容はジェームス・w・ヤング著『アイデアのつくり方』を参考にして、料理に落とし込んで僕なりに解説をしていきます。

では、早速。

イデアの閃き方には、大きく分けて5つの段階があります。
①収集 
②咀嚼
③放棄
④入手
⑤実現


ちょっとわかりにくい表現ですので、①〜⑤を詳しく以下にまとめます。

①収集
資料収集のことです。
資料には大きく分けて【特殊資料】と【一般資料】の2種類に分けることができます。
特殊資料:専門性の高いもの
一般資料:一般教養や常識など 
料理における特殊資料には例えば、
旬の食材とその特徴、調理法、熱源の特徴、扱うことのできる調理器具・設備、お客様の嗜好など。

多くの場合、この資料収集の段階で挫折してしまうか、収集量が不十分なため次の段階に進めなかったりします。
常日頃、いついかなる時も、美味しい料理を提供したい。お客様に料理で感動を提供したい。と強く思っていたならば、ふとした車内広告も、コンビニの惣菜も、友達との会話の中にもアイデアの種は転がっています。

②咀嚼
次に、集めた情報を整理、解釈していきます。
そして、色々な組み合わせを試してみたり、試行錯誤していきます。

例えば、秋の料理を考えるとしたら、
松茸、栗、秋刀魚、十五夜、ハロウィン、稲刈り、紅葉狩りなど、
秋で連想される事柄を、特徴や調理技術、設備を加味しながらとことん考え抜きます。
この段階での注意点は、ありきたりの組み合わせに囚われてしまうことです。
奇をてらった組み合わせだとしても、絶対合わないと思われる食材の組み合わせでもひきだしの一つとして持っておくことも重要です。

この段階で諦めてしまう人が多いのも事実であるし、咀嚼レベルが圧倒的でないとそれなりのものしか生まれてこないことは容易に想像できますよね?

③放棄
咀嚼の段階で圧倒的に考え抜いたからこそ、潜在意識にまで「アイデアを作り出す」という目標を落とし込むことができます。
ここまで行ったらもう少し!
ただ、ここで焦ってはいけません。
一旦、考えるのはやめましょう。
なんでだよ!という声が聞こえてきそうですが、脳を少し休ませてあげて、無意識に脳が働いてくれるのを待つのです。
待つと言っても何をすればいいのかわからないですよね。
ただただ、好きなことをやったり、リラックスしてください。
趣味に時間を使ったり、軽く運動するのもいいでしょう。私の場合、なんなら寝ちゃいます。情報の記憶が勝手に整理されますからね。
気張らず時間を過ごすことです。

④入手
さあ、ようやく深い霧が明けてきそうです。
そう、アイデアを手に入れることができるのです。
どんなタイミングでアイデアを手にできるかというと、ふとした瞬間です。
三上(さんじょう)という言葉はご存知でしょうか?
1000年ほど昔、中国の政治家であり文学者である欧陽脩は
『余、平生作る所の文章、多くは三上に在り。すなはち馬上、枕上(ちんじょう)、厠上(しじょう)なり』
要するに、アイデアが降ってくるときというのは、デスクに向かっているときや包丁を握っているときに限らず、むしろリラックスしている何気ないときということです。
私の場合は、朝起きたらすぐにシャワーを浴びるのですが、この朝のシャワーの時間がゴールデンタイムです。なので浴室のドアのすぐそばにスマホを置いておき、忘れないうちにメモを残しておくようにしています。
さて、あなたの三上はいつでしょうか?
電車での移動時間、ベッドに入ったとき、トイレの中、サウナの中かもしれません。
いつ何時、アイデアが降ってきても大丈夫なようにメモしたり忘れないような環境を整えておくことはかなり重要です。
ここまで準備できたらクリエイティブな人材まであと一歩!

⑤実現
さて、最後の段階までやってきました。
④でようやく形が見えたアイデアを実際に実用化していきましょう。
④の段階で満足していたらまだまだ二流です。
降ってきたアイデアが一つないし複数あると思うので、状況に応じて最適化していきます。
アラカルトメニューであれば、ポーション、値決め、原価率、提供方法、付加価値。
様々な視点を持って最適化していきましょう。
定番居酒屋メニューの唐揚げで検証してみても、
ポーション:何gのカットにするか、何個つけるか

値決め:5個500円、1個120円、10個800円
原価率:5個500円(30%)、1個120円(25%)、10個800円(37.5%)※1個の原価が30円と仮定
どんなお客様のご来店が多いのか、名物にしたいのか、業態は?原価率予算は?一日何皿出したいの?

考えて考えて考え抜いて、検証し試行錯誤、お客様の反応、ご感想、原価コントロール
マイナーチェンジを繰り返し、ようやく完成形に近づきます。

飲食店で料理を提供するという行為は、もちろんお客様あってのこと。
絶対的に美味しい料理というものは存在せず、
『美味しいと感じて頂ける料理』
しかありません。

その時には最高だと思える料理のアイデアも場所、季節、食べる人によっては最高ではなくなります。
大手のアイスクリームメーカーの同じ銘柄でも季節によって味を変えているという話もあるくらいです。

柔軟かつ謙虚な心で料理開発に向き合ってほしいと思います。